雇用保険・失業保険
マニュアル
雇用保険とは
雇用保険とは政府管掌の強制保険制度。簡単に言うと使うか使わないか適応者が選べる民間の保険とは違い、事業で労働者を雇用した段階で原則強制的に適応しなくてはならない国の保険ということです。保険というとなんとなく任意加入のようなイメージを持つ方もいらっしゃるでしょうがこの雇用保険に関しては、社員として働く以上必ず加入しなければならないということです。「失業保険」という呼び名もよく聞かれますが実は失業保険という言葉は現在行政では使われていません。
昭和22年に施行された失業保険法は経済構造の変化に伴う見直しの結果、単なる失業時の手当てというだけでなく、その他の雇用に関する総合的な役割も担う制度として昭和50年に雇用保険法として改められました。
つまり当時の名残で現在も会話の中では失業保険という言葉も一般的ですが、「雇用保険」というのが正しい名称です。
雇用保険の役割は大きく分けて2つ
- (1)労働者の生活、および雇用の安定と就職の促進のため、失業者や職業訓練を受ける方に対して失業等給付を支給する。
- (2)失業の予防、雇用状態の是正および雇用の機会の増大、労働者の能力開発および向上、福祉の増進等を図る。
日常会話で雇用保険というと(1)のイメージがありますが、社会全体をバックアップするという(2)も雇用保険の担う大きな役割です。雇用保険のお金は毎月のお給料から一定額控除される形で蓄えられています。会社から受け取る給与明細に「雇用保険」という項目があり、金額はそこで確認できます。
雇用保険の仕組み
一口に雇用保険と言ってもその種類は様々です。一般に失業保険と言われている雇用保険は「基本手当」に該当します。
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| 高年齢求職者給付金 | ||||||
失業等給付 |
| 特例一時金 | |||||
| 日雇労働求職者給付金 | ||||||
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| 教育訓練給付金 | ||||||
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雇用保険第二事業 |
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失業保険から雇用保険となったことからもわかるよう、世の働く人たちのために何度も法改定を重ねてきた制度ではありますが支給額は年金同様に減少傾向にあり、まだまだ不十分だと指摘される点が多くあるのも事実です。ですがそれでも退職して給料の無い不安定な状況で、雇用保険は大きな助けとなります。退職を完全に決めてしまう前に、手当の受給条件等しっかり確認して後悔の無いようにしておきましょう。
雇用保険(失業保険)の受け取り方
- (1)雇用保険に加入している
当たり前ですが雇用保険は保険です。加入していなければ受給することは出来ません。但し民間の保険ではないので自分で手続きする必要はありません。入社する時点で会社側が手続きを行います。給与明細を確認して、保険料がきちんと引かれていれば問題ありません。 - (2)勤務期間を満たしている
これも当たり前といえばですが当たり前で、何も収めずに手当の支給だけが行われる保険などありません。つまり一定期間は必ず会社に在籍していなくては雇用保険を受け取ることは出来ないのです。
具体的には退職した日の1年以上前から勤務していることが条件です。但し会社の倒産や解雇など、会社側の都合で止むに止まれず退職になった場合は半年以上の勤務でも受給することができます。こういった仕方のないケースで退職する人のことは自己都合退職の場合と区別して「特定受給資格者」と呼びます。 - (3)働く意思がある
そもそも雇用保険の大義には「雇用の安定と就職の促進」「雇用状態の是正および雇用の機会の増大」というものがあるので、職を失っても次に働く意思がなければ受給出来ません。つまり例えば大学に進学するため等、働く意思のない場合は雇用保険は適応されません。
また働く意思の確認として4週間に一度はハローワークに出向き、何件の求人に応募した等の活動報告をしなくてはなりません。そこで就職活動を行っていることが確認出来ない場合、働く意思が無いと見なされ手当てを受けることが出来なくなってしまいます。
雇用保険(失業保険)の支給額
失業手当てとして支給される金額は『1日あたりの金額×支給日数』です。1日あたりの金額とは、退職日から6ヵ月前までの給与(賞与は除く)を180で割った金額で、賃金日額と言い、その50%~80%が1日あたり支給される金額になります。但しその6ヵ月の間に賃金支払基礎日数が11日未満の月があったり、育児や介護のために所属部署を変わって給料が下がったりした場合、時給制や日給制、出来高払いなどで働いている場合は賃金日額の算出方法が少々複雑になるので全ての人がこの計算式に当てはまるわけではありません。
重要なのは退職前6ヵ月の期間の給与が失業保険手当の金額に影響するということです。ここでいう給与とは基本給などの固定給のみではありません。つまりいやらしい話ではありますが、退職前の6ヵ月に残業を増やしてその間の給与を高くすれば貰える手当の金額も増えるということなのです。
雇用保険の受給日数については下記の表のように、雇用保険に加入していた期間によって異なります。
手続きの仕方
雇用保険の手当を受けるための手続きは、最寄のハローワークで行えます。
その際に下記のものが必要となるので事前に用意しておきましょう。
<基本手当受給の手続きに必要なもの>
- ・離職票
- ・雇用保険被保険者証
- ・身分証明書(運転免許証・住民票など)
- ・証明写真(2枚 3×2.5cm)
- ・銀行通帳(本人名義)
- ・印鑑
- ・筆記用具
離職票と雇用保険被保険者証は、退職後に会社から郵送されてきます。その他のものは自分で用意が必要です。手続きが遅れれば遅れる程、その分受給日数も短くなってしまうので、会社から送られてくる書類が届いたらすぐに手続き出来るよう余裕をもって準備しておきましょう。
支給開始日について
では雇用保険の手続きを済ませたら、いったいいつから手当をもらえるのか。これについては退職状況に応じて2パターンに分かれます。倒産や解雇などの会社都合で失業した場合は1ヵ月後、自己都合で退職した場合は4ヵ月後からの支給となります。
会社都合による退職
退職時の年収 | 雇用保険の加入期間 | ||||
1年未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30歳以上 35歳未満 | 90日 | 90日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上 45歳未満 | 90日 | 90日 | 240日 | 180日 | 270日 |
45歳以上 60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
自己都合による退職
全年齢 | - | 90日 | 90日 | 120日 | 150日 |